2016年10月13日(木)
舞台『今日は炭酸が飲みたい気分だった。』を終えて、自分の次のステップへの贈り物になりそうなメモを記しておこうと思います。
記してみると、結構「当たり前なこと」ばかりでした。それでも、自分の経験を通したことで、実感の伴った「当たり前」に、これからの活動の中に生きる「当たり前」になるのではないかと考えています。自分自身のために記したものですので、興味がある方だけご覧になってください。
・「伝える」ことの大切さ
・ひとりでやる、ということ
・ひとりではない、ということ
・超絶早い一週間
・やらなきゃいけないことしかない
・メリハリ
■「伝える」ことの大切さ
作品は、自分の考えをお客さんに向けて、伝えたり、届けたり、発信したりするものですが、
作品を作るためには、お客さんに向けたベクトルだけでは足りないことを実感しました。
舞台を作り上げるプロセスにおいては、「スタッフさんに伝える」ベクトルがとても重要です。
良い舞台を作るためには、スタッフさんに「こうして欲しい」といったイメージをしっかり伝えなければなりません。
僕は今回の公演を通じて、イメージをちゃんと伝える力が弱いと気が付きました。
照明スタッフと打ち合わせをしていた時のことです。
僕が「なんか、ここは、ぼんやりとした明かりというか…」と曖昧な表現で説明していると、
他のスタッフから「その伝え方がぼんやりしてる!」と突っ込まれ、ハッとしてしまったことがありました。
自分の中で定まっていないイメージを中途半端に話してしまうと、互いに頭の中がクエスチョンマークでいっぱいになってしまいます。
ただ、相手はプロの方々ですので、曖昧なまま伝えてこちらの意図と悟ろうとしてくれます。
なので、自分の中でしっかりとできているイメージは伝える、自分でもどうしたらいいのか分からなくてこまっているところ、考えている最中のところなどは、そのことを伝えた上で相談すべきだと思いました。
あと、余談ですが、そもそも自分がイメージできる引き出しの少なさも感じました。
お世話になっている方に来ていただいた時、演出案でA案とB案しか考えられなかった僕の脳内に「こうするのどう?」とC案、D案を持って来てくださりました。目から鱗で、自分が思い描けない選択肢もたくさんあるのだと気が付きました。
他者との対話は、イメージの引き出しを豊かにしてくることも学びました。
■ひとりでやる、ということ
ひとり舞台の出演者は、ひとりです。
つまり、稽古場では役者はひとりです。
ここで演出家がいると、その稽古を見てもらって、ダメ出しをもらうことができます。
しかし、作・演出も兼ねると、稽古場では完全にひとりになります。
演出家がいて、役者が何人かいる現場しかほとんど経験した事がなかった僕は、
ひとり稽古が大変でした。というより、孤独でした。
強い精神力を持っていれば大丈夫なのかもしれませんが、そこまで強くない自分にとっては稽古場に到着してから自分を奮い立たせるのに時間がかかりました。
でも、完全にひとりでやっていた訳ではなく、途中からは知人や仲間に観てもらったりもしました。
そのおかげで、稽古の進行もひとりの時よりも進む日もありました。
しかし、本番に近づいていく中、どこか集中できていない部分があるなと感じていました。
このふわふわした感じはなんだろうと考えた時、
公演に向けての稽古以外で「すべきこと」が終わっていない状態があり、それが終わる予定が立てられていないことによる不安からきていました。
そして、何が終わっていないのか、の正確な把握もできていませんでした。
つまり、TO-DOリストをちゃんと立てられていなかったのです。
正しくは、今回は「ひとりだから先手先手でいこう!」と、最初にTO-DOリストを作成していました。
しかし、日が経つに連れて、やらなきゃいけないことは増えます。TO-DOリストは変動します。
その更新がちゃんとできていませんでした。
「これができていない」「あの小道具まだ買っていない」と言った明確な状態であれば、目処が立ったはずです。
「何かができていないことが何かある、はず」という状態が漠然とした不安になって、稽古場でのふわふわした状態になっていました。
途中から「これはいかん!」と改めたリストを作り、なんとかなりましたが、それでもまたTO-DOリストは変動していきました。
ひとりでやる。ということは、少しの気も抜けないことだと、ここで気付きました。
ひとりでやる際はこのTO-DOリストは必要以上に気を張った方が良いと思いました。
そして、後にも書きますが、ひとつ後回しにすると、見事にツケが回ってきます。
自己管理の大変さはありましたが、今回ひとりでなるべく全ての事を抱え込もうとしたのは良かったと思いました。
もちろん、手伝っていただいた部分もかなり多くありますが、自分で把握しながら動くことができたことが、「次やるならこうしよう」と考えられるようになりました。
こんなに細かい部分もやらなきゃいけないんだ。とか
次はここを手伝ってもらえるスタッフさんを用意すべきだ。とか。
これとこれはまとめて準備した方が良かったな。とか。
アレ準備したけど、結局意味なかったから次はカットしよう。とか。
あそこのお弁当屋さんが美味しかったから、次回もケータリングで。とか。
ひとりでほとんどやったことの気付きは大きかったです。
■ひとりではない、ということ
ひとり舞台は、ひとりではできません。
ひとりで何でもしようとしてしまった瞬間がありました。
しかし、どう考えても無理!な状況が来ました。
そういった時には各スタッフ、協力してくれる方にしっかり頼らせていただきました。
あまり経験値がある訳ではないですが、今まで出会って自分の中で信頼のおけるスタッフさんにお願いしました。
分からないなりに打ち合わせをして、あの手この手を相談させていただきました。
頭が上がりません。
たくさんの方の支えによって、ひとり舞台ができること、忘れてはいけない!
■超絶早い一週間
一週間が本当に「アッ」と言う間でした。
■やらなきゃいけないことしかない
TO-DOリストにならんでいる項目は、優先順位はありますが、全てやらなければならないことです。
些細な事でも、後回しにするとボディーブローのように後からじわじわ効いてきます。
抜けがひとつでもあるとすべて自分に返ってきます。
すぐできるだろうと思っていた事を、先延ばしにして、直前になってドタバタしてしまいました。
本当に先手、先手で動くべきだなと思いました。
■メリハリ
時間の使い方として、『メリハリ』が本当に大事だなと思いました。
日が迫るに連れて、舞台以外のことを考えなくなるのですが、
その中でも演技の部分を考えるのか、演出の事を考えるのか、劇場での動きの事を考えるのか、制作的な事を考えるのか、時間配分を区切ってメリハリをつけて、行わないといけないことに気が付きました。
時間配分をしないと、どの項目も延々と考えてしまうからです。
だらだらと7時間稽古するより、凝縮して2時間稽古する方が効率よかったです。
この時間は絶対にそれ意外のことは考えない。と決めて、稽古だけに集中する。
区切る。
これも結局当たり前の事ですが、自己管理が得意でない自分としては、大変な作業でした。
今後これを丁寧にやっていかないと、この先はないなと思いました。
まだまだたくさんありますが、このくらいにします。
全ては当たり前な事ばかり。
こうやって書いてみると、公演を打つ前から「わかっていた」ことが、「わかっていなかった」のだと気付かされました。
そして、わかっていてもできないことばかりでした。
今回の学びを財産にして、何よりこうやって公演を打つことができた周りの環境に感謝して、また一歩進んでいきたいと思います。
濱口啓介